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昔のアナログレコードは再生されるべき周波数特性カーブがあるということ

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ここ数年毎日のようにアナログレコードを聴き続けてきたのだが、先日「合研LAB」さんの「周波数特性可変の」フォノイコライザーというものを購入した。
数ヶ月あれやこれや聴いてみてようやく最近になってわかってきたことを書いておくことにする。
いまさらな感じはするが、結論を最初に言ってしまうと、昔のアナログレコード(特に外盤)は再生されるべき周波数特性カーブを、盤によっては変える必要があるということだ。
当たり前の話なのかもしれないが、国内の一般的な機器でレコードを聴いていると意外と気がつかないのではないかと思う。
あくまでも「昔の」(1980年代頃までにプレスされた)そして主に「海外でプレスされた」レコードの場合についてだが。(※最近では、国内プレスのレコードでもRIAAでないものが多く存在していると感じている。むしろRIAAのレコードってあるのだろうか?と思うほどに。2023年12月追記)

アナログレコードの「周波数特性カーブとは何ぞや?」ということだが、簡単にいうと
レコードの溝には、音の情報を低域を減衰させて高域を強調させて刻まれている都合上、再生時はフォノイコライザーアンプで音を平坦な音に戻す必要がある。
その戻すときの調整(イコライジング)する波形を周波数特性カーブという。

そもそものきっかけは、古いDECCAのアルバムはDECCA推奨の周波数特性ffrrカーブで聴くと自然な再生音になるという話をネット上で読んだこと。
そして何よりも、手持ちのレコードで違和感のある音がするレコードが結構あったことだ。
調べていくと、周波数カーブにはffrrの他に、AESカーブ、Columbiaカーブ、NABカーブなどいろいろあるということもわかり、合研LABさんのアンプにも出会えたわけだ。機器はRIAAなのに、レコードが違うカーブだったら正しい音で再生されないのではないか?

ということで、実際に合研LABさんのフォノイコライザーを使用して手持ちのレコードを聴いてみた。
僕が購入した機器は合研LABのGK05CR (EQ for MM)というステレオに対応した特注モデルで、周波数特性はAES/RIAA/Columbia/FFRRの4種のカーブに対応しているもの。

いろいろ聴いた中でまず、英国DECCA1958年録音の超名盤、ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団によるメンデルスゾーンのスコットランド交響曲。
DECCAのオリジナル盤はなかなかの高額で入手も難しく、手元にあるのは1970年代の米国LONDONの廉価盤シリーズのもの。
廉価盤とはいえ、盤は英国DECCAプレスである。
最初聴いたときは、低域が膨よかで高域はほとんど強調されない分やっぱり廉価盤だから?とか、録音が古いからなのかという印象。
が、ffrrカーブでの再生音はというと、音場が左右に広がり奥行きが出て各楽器の分離がよくなりオーケストラに近づいた感じ。
高域が強調されることにより弦や木管が艶っぽく響き、低域が和らぎ奥行きが出たことにより、今までぼやっと聴こえていたコントラバスも左奥に蠢く固まりとして見えだすなど立体感がうまれ、なるほどこれは名録音だと納得がいった。
こうなってくると全く別のソースを聴いている感じで音楽への集中度も変わってくる。

逆に少し戸惑ったのは、旧東ドイツのレコードレーベル「ETERNA」のサヴァリッシュのシューマンだ。
これはCDの音が気に入らなくて再びレコードを始めるきっかとなったレコードでもある。
ようやく入手したETERNAのレコードを最初聴いたときの印象は、噂どおり英国EMI盤より音像が近くて驚いたが、正直音質に関してはザラついた質感の響きでCDと大差ない印象だった。
がこれも、最初ヨーロッパで多いと言われるNABカーブ(この機器だとColumbiaカーブに相当)かと思いきや、聞き込んでいるうちに最近ではこれはffrrカーブではないかと思っている。多分ですが、最近はAESカーブがしっくりくるように思います。(2020年7月時点)
シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀といわれる響きがバランスよく自然に鳴り響く。
納得のいく音に近づけたようで、ようやくこのレコードを気持ちよい音で聴くことができるようになった。

1950年代、世界の周波数特性カーブは各国バラバラだったのだが、1960年頃にRIAA カーブに統一されたというのが一般的な話。
僕がレコードをよく聴いた1980年代のオーディオ機器はほとんどRIAAカーブを採用していたらしい。
あの当時、グラフィック・イコライザーが流行っていたのは、これら事情も関係していたのかもしれない。

非常にリーズナブルな価格でこういった機材を提供してくださる「合研LAB」さんには本当に感謝である。
通常ではこうした周波数可変のフォノイコライザー機器は最低でもウン十万円はするものがほとんどではないか。
それがほんの数万円で手に入るのだから。
これはクラシックのレコードに限ったことではなくロックやポップスのレコードにも言えることで、今後少しずつ書いていこうと思う。

scotch
廉価盤 米国LONDONのTreasuryシリーズのマークのスコットランドのジャケ。

ffrr
その内袋。1970年代のレコードと思われるがffrrと耳のマーク。

aceofdiam
こちらは、1966年英国廉価盤のラベル。上部にFULL FREQUENCY RANGE RECORDING(ffrr)の文字。
こっちのレコードは、より細部がはっきりした素晴らしい音がする。
(2017/5/30追記)後日、改めて聴いてみたが、こちらは細部がはっきりしたというよりは、中域から低域にかけての音の広がりがより膨よかでオーケストラの音像がより大きく響く。機器の接続をオヤイデの電源タップに変えてしばらくたってからの再試聴。より音の差がはっきりしたように感じた。

lpcl-1571
そして、サヴァリッシュのシューマン。
このレコードはETERNA盤を黒青合わせて4組ほど、英国EMI2組、独ELECTROLA盤も2組、SUPRAPHONE盤、国内盤などを聴いてみた。
こちらはまた別の機会にまとめてみようと思う。

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