カテゴリー : Brasilian Music

Baden Powell / Images on Guitar(バーデン・パウエル/イメージズ・オン・ギター)

バーデン・パウエル(1937-2000)。ブラジルが生んだ孤高のギターリスト、コンポーザー。
ここのところよく聴いているのだが明日9月26日はちょうど命日にあたる。

ボサノヴァという音楽の存在を知ったのとほぼ同じタイミングで初期の傑作「ア・ヴォンタージ」を聴いた。
超絶的技巧を駆使した「イパネマの娘」や「ビリンバウ」「コンソラソン」などブラジル音楽の奥深さみないなものを感じてショックを受けたのを憶えている。

「イメージズ・オン・ギター」は1971年のアルバムで60年代のバーデンよりも演奏スタイルが少し落ち着いてきた頃の作品といわれているが、バーデン特有の節回しやフレージングなどをじっくり聴くことができるアルバムだと思う。
1曲目の「Ate eu」は女性ヴォーカルとバーデンのスキャットによる哀愁漂うナンバー。
このアルバムに漂う独特の雰囲気を印象づける1曲。
2曲目の「Petite Waltz」はアフロ・サンバ調の高速ワルツ。途中テンポがガラッと変わるところがいい。
5曲目の「Blues a volonte」もバーデンと女性のスキャットの掛け合い、そしてBluesyなギターは超カッコいい。
他にも聴きどころはあるのだが、やっぱりはずせないのがバーデンお得意の哀愁のナンバー「Sentimentos」。
「O Astronauta」や「Tempo Feliz」と同じラインの曲だと思うがとても好きな曲。
アグスチン・ペレイラ・ルセーナの「Despues De Las Seis」なんかもこの辺りのバーデンの作品にインスパイアされて作られた曲ではないだろうか。

カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre Grupo)

カルロス・アギーレの2008年作品。
こないだ書いたクリーム色のアルバムもジャケットに水彩画が入っていてとても凝った作りだったが、このアルバムも同様に目の形にくり抜かれた窓から瞳を構成する3枚の紙が顔を出す作り。
真ん中に大きさの異なる穴のあいた2枚のライナーとやはり水彩の絵が1枚入っている、とっても素敵だ。

クリーム色のアルバムよりも曲の規模が大きくなって10分を超える曲が3曲、6分ぐらいの曲が2曲、1分ちょっとの曲が1曲という内容。
スキャットを含むインストゥルメンタル中心の内容だが、どの曲も美しいメロディーと和声で溢れている。
ピアノ、ギター、ベース、パーカッションに加えてマンドリン、チェロ、フルートそしてバンドネオンなどが加わっている。
が、音が入り乱れて濁ることは一切なくシンプルに聴こえながらも、おそらくかなり複雑な音と音が響き合う奇跡のような瞬間がいたるところにある。

お気に入りは4曲目の「Casa nueva」。
僕ら日本人の心の琴線にも触れる懐かしいようなちょっと切ないしっとりした美しいメロディが印象的。
中間部のピアノのリズムとバンドネオンはピアソラを彷彿とさせる。

タチアナ・パーハ & アンドレス・ベエウサエルト(Tatiana Parra & Andres Beeuwsaert / AQUI)

タチアナ・パーハ & アンドレス・ベエウサエルトの「AQUI」。
アンドレス・ベエウサエルトはアナ・セカ・トリオというアルゼンチン・フォルクローレの代名詞的存在のユニットのピアニスト。
タチアナ・パーハはブラジルはサンパウロ出身でアンドレスの前作「DOS RIOS」(これもすごくよかった!)やアカ・セカ・トリオのアルバムなどにも参加している女性ヴォーカリスト。

ここのところ、アルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレといわれるくくりの音楽(まだよくわかっていなのだが)を聴いている。
先日書いたカルロス・アギーレを聴いて以来このあたりの音楽に共通する独特の浮遊感と和声の心地よさに完全にはまってしまった。
浮遊感といってもミナスの音楽にある浮遊感とはまたちょっと違った空気感。

アルバムはアンドレス・ベエウサエルトのオリジナル曲を中心にカルロス・アギーレの楽曲やエドゥ・ロボの「Corrida de Jangada」(エリス・へジーナ「IN LONDON」の1曲目)そしてチャールズ・チャップリンの「ライムライト」までいろいろ。
だが、どの曲も音と音がぶつかり合ってゆっくりと解け合いながら広がっていくような自然な響きに満ちている。
MPBやボサノヴァなどを聴き慣れた耳にもすんなりと入ってくるとっても心地よい音楽。
アンドレスのピアノと息のぴったりあったタチアナのスキャットが素晴らしい。

BRAZILiAN OCTOPUS

先日書いたアミルトン・ヂ・オランダ & アンドレ・メーマリの「gismonti pascoal」で書いたエルメート・パスコアルの関連作品ということになるが、1970年に発表されたブラジルのインストバンド「ブラジリアン・オクトパス」の唯一のオリジナルアルバム。
カエターノらとトロピカリズモを支えたギタリスト、ラニー・ゴルディンが中心となって結成されたバンドでこの中でエルメート・パスコアルはヴィブラフォンで参加している。

ジャケットからもわかるがピアノ、オルガン、ギター、フルート、サックス、ヴィブラフォン、ベース、ドラムスからなるかなりユニークな8人編成のバンド。
変わっているのは編成だけでなく音楽がとっても面白い。
60年代特有のドラムパターンやオルガンのバッキング、そしてヴィブラフォンのサウンドはまさにモンド系ラウンジミュージックだ。
フルート、サックスや個々の楽器の和音の積み方など緻密に計算されていて素晴らしい。
それなのに曲は決してこむずかしくなく全篇をとおして漂っているほのぼのした雰囲気がなんともいえずいい。
ガブリエル・フォーレ(1845-1924)の「パヴァーヌ」なんかも取り上げているのだが最初聴いた時は他の曲とあまりにもなじんでいて気がつかなかった。(フォーレはいわゆる近代のフランスの作曲家だが和声の点でブラジルの音楽との接点も多いようだ。)
デオダードなんかも同じフランスのラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を取り上げたりしているしこのあたりの音楽はきっと近いものがあるに違いない。
1曲が2〜3分ぐらいで曲調もバラエティに富んでいてとても楽しいアルバムだ。

ちなみにこのアルバムLP市場でがかなりのお宝盤のようでかなり高額で取引されているらしい。
今こういう時代のなか南米系音楽は特にリイシューが活発に行われていて、こういう貴重な音源を手に出来るのはとても幸せなことだと思う。

アミルトン・ヂ・オランダ & アンドレ・メーマリ(gismonti pascoal / Hamilton De Holanda & André Mehmari)

ブラジルのバンドリンの名手アミルトン・ヂ・オランダとピアニスト、アンドレ・メーマリによるブラジルの作曲家エグベルト・ジスモンチとエルメート・パスコアルへのオマージュ、作品集。

バンドリンの音色がすごくいい。
バンドリンの素朴な音色で奏でられる美しいメロディと浮遊感のあるピアノの和音が心地よい。
それから当然なのかもしれないけど曲がまたすごくいい。
コロコロと跳ね回るような超絶的プレイが聴ける曲もいいが、作曲者エグベルト・ジスモンチ自身も参加している「Fala De Paixao」なんか、どこか広い草原のような場所でそよ風に吹かれているようなそんな感じの心地よさ。
ずっと聴き続けていたくて何度も何度もリピートして聴いた。

バンドリンって同じ南米の楽器のカヴァキーニョ(形も音色もかわいらしい)の兄貴分みたいに思っていたが、マンドリンと見た目も奏法もほとんど同じらしい。
ブラジルではショーロなどで使われる楽器だがこのアルバムを聴いてこの楽器にも興味がわいてきた。

エグベルト・ジスモンチもエルメート・パスコアルもほとんど聴く機会がなかったがこのアルバムでこういう形で聴くことができてとてもよかったと思う。