アストル・ピアソラ(1921-1992)。
アルゼンチンの作曲家、バンドネオン奏者、現代タンゴの演奏スタイルを確立させた人物。
1992年にピアソラが亡くなり、その後90年代半ばから再評価されはじめる。
ヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルがピアソラ作品集を発表したり、チェリスト、ヨー・ヨー・マによる「ヨー・ヨー・マ プレイズ・ピアソラ」がTVCMなどから爆発的なヒットをし、ピアソラ・ブームが巻き起こった。

僕がピアソラの音楽を初めて聴いたのもちょうどその頃。
それまで「タンゴ」といっても「黒猫のタンゴ」ぐらいしか思いうかべられなかったのだが、ピアソラの音楽を聴いた時の衝撃はすごかった。
ものすごく洗練された音楽。Jazzや現代音楽を思わせるような複雑な響き。
その中にバンドネオンの何ともいえない哀愁を帯びたメランコリックな音色。

今まで聴いたピアソラの楽曲の中で、この「スール(甦る愛)」は、とても好きな曲だ。
映画「スール」のサウンドトラックのために書かれた曲。(映画はまだ観ていないのだが是非観てみたい)
引きずるようなコントラバスとピアノ低弦のユニゾン、何かに翻弄され突き動かされでもしているかのように奏でられるバンドネオン、楽曲の中に漂う独特の緊張感とドラマ性などが相俟って音楽の世界へ一気に引き込まれる。

タンゴは決して明るい音楽ではないと思うのだが、ここでのピアソラのタンゴは更に重く、厳しく、激しい。
甘く切ないメロディを奏でたかと思うと、怒りに満ちた劈くような鋭い音色を出したり、むせび泣くようなトレモロ奏法があったり音楽表現の幅もとても広い。

このサントラの中では、ヴォーカルヴァージョン、ピアソラのバンドネオンと五重奏団によるインストヴァージョン、ピアソラのバンドネオン・ソロ・ヴァージョンで聴くことができる。
「ラ・カモーラ:情熱的挑発の孤独」の中でも再演、「ヨー・ヨー・マ プレイズ・ピアソラ」のなかでも演奏されている。